実業家原安三郎氏が若き頃、先輩財界人である根津嘉一郎氏を訪問したところ、「きみはぼくから聞くばかりだ。少しは土産になる話を持ってきたまえ」と叱られた話が、作家城山三郎氏の本に載っています(『打たれ強く生きる』、新潮社発行)。
経営幹部や営業マンが表敬訪問と称して定期的に得意先等を廻りますが、訪問を受けた側にとっては迷惑と思うことが時々あります。訪問する側からするとその活動を営業活動や情報収集活動と考えていますが、相手の関心や利益を考慮しない活動は、後日の成果に結びつかないものです。
保険販売をしているAさんは定期的に得意先企業を廻る際に、本社や営業部が用意するパンフレット・企画提案書以外に、日頃から収集した新聞の切抜きや業界資料を得意先の業種等を勘案して持参します。訪問した際の世間話として、得意先企業に関連した情報を提供出来るように努めています。さらに、相手方が話に関心を抱いて提示した資料より詳しい内容を求めた場合には、本社の関係部署に協力をお願いしています。
情報収集とは、相手からよい話を聞き出すことだけが目的ではなく、相手の関心事に焦点を当てて話し合うことです。他人を訪問する時には、相手の利益になる話題(土産話)を用意することが大切です。