某所の商工会で開業相談員をした時のこと、開業動機や採算計画等の説明を始めたところ、「私はそんな捕らぬ狸の皮算用みたいなことはしたくありません。むしろ、早く事業に成功して夫婦で世界旅行に行きたいのです」と言われたことがあります。当然、開業の準備としては問題があると思いましたが、商売に成功した時の大きな夢が開業の動機でも良いかもしれないと考えました。
X社(居酒屋3店経営)の創業者X氏は30歳で独立し、計画性に富んだ堅実経営を続けてきた為、比較的順調に業績を上げてきました。後継者(長男と長女)にも恵まれ、65歳で仕事から退きました。最初は安楽な生活を楽しんでいましたが、やがてうつ状態になってしまいました。自分は一体何を楽しみに仕事をしてきたのか、と。3年程は病院に通っていましたが、ある時知人から農業体験に誘われてその面白さに感動し、やがて近くに農地を借りて野菜や穀物を作るようになりました。農作業によって金儲けをしているわけではありませんが、何か人生において大切なものを生み出している悦びを感じるようになりました。
どんな仕事の開業も計画が大事ですが、開業前から計画達成後(引退後だけでなく途中でも良い)の計画を夢見ることも有意義でしょう。儲けぬ前の胸算用とでも考えて、辛い仕事を乗り越えて行けば良いのです。