「啐啄(そったく)同時」という言葉があります。鳥の卵がヒナになる時、中から殻をコツコツと突いて親鳥に知らせることが「啐」、親鳥がすぐに外からくちばしで殻を割ることが「啄」です。「啐」と「啄」が同時に行われると無事に孵化(ふか)します。経営者や管理者との面談で度々耳にする嘆きに、今の若手社員は「指示待ち族」というものがあります。要するに、部下が上司の指示命令通りには動くが、指示がなければ何もしないという不満です。何が原因かと言えば、部下のこれまでの行動習慣かもしれませんが、家庭・教育現場・職場等で管理する側にも対応上の問題があったと思います。
以前、人間修養を積んだ某社の経営者から教えられたことがあります。「上司も部下も、意思疎通に関して一を聞いて十を知ると言う心掛けが必要だ。特に上司は部下に何か一を教える時、それによって部下が十くらい学べる工夫が大切だ。部下は上司の考え方や行動予定を把握して次の指示を予想・準備し、同時に上司は部下が予想した内容と時機で指示を出せるように努めなければならない」、と。正に、啐啄同時の精神です。指示待ちの返上によって、会社も社員も成長します。所謂“阿吽の呼吸”です。
指示待ちは、経営方針が曖昧であったり、上司の仕事の進め方が気まぐれであったりすることが原因かもしれません。