「天の時は地の利に如(し)かず、地の利は人の和に如(し)かず」これは『孟子』にある言葉ですが(「天の時」は天地自然の現象、「地の利」は土地・道路・山河等の状態)、要は何事も人の和(民心の和合)が最も大切ということです。天・地・人を社名や社訓に標榜する会社も多いと聞きます。
X社(販売業)の社員は大変穏やかで仲が良いと評判です。社員がチームを組んで共同で売り込んだり、一緒に訪問して得意な商品別に説明を分担したりしています。冠婚葬祭等の交際が重複した時には手分けしたり、苦情処理はお互いの得意技を発揮して助け合ったりして、その迅速な行動が取引先から信頼されております。ある時、X社の社長に社員の礼儀正しさや協調性を称賛したところ、社長は「実を言うとねえ」と過去の失敗を打ち明けてくれました。「創業から10年間くらいは歩合給で社員同士のライバル心を煽り、朝礼で営業成績を発表しました。一時は成果が上がりましたが、社員の定着が悪く、取引先や同業者からマナーの悪さを非難され、社員同士の喧嘩が絶えませんでした」と。結局、歩合給を廃止して、社員を3〜4人のチーム制にして協調性を重視するようにしたそうです。今、X社は取引先からも社員モラール(労働意欲)の高い会社という評価を得て、社員の対話も活発です。