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作成日:2018/07/30
気まぐれコラム《値上げか、据え置きか》

 井原西鶴著『世間胸算用』に、蛸(たこ)を売り物にする魚屋が登場します(角川書店刊、前田金五郎訳注参照)。日頃は蛸の足を1本切って売り、切り取った足は煮売屋に売って儲けていました。誰も気付きませんでした。ある年末に足を2 本ずつ切って6本にして売っていたら遂に露見し、「足切り八助」という評判が立ち暮らしの種が上がったりになりました。デフレ経済が長く続いたためか、国民全体が値上げに対する抵抗感が強くなっています。原材料や人件費等のコストが上がっても、商品価格の値上げが難しい。その苦肉の策が、価格を据え置いたまま1 品当りの分量を減らしたりして、収益を増やそうとしているのです。蛸1匹の値段をそのままに、足を1本か2本切る行為と類似します。

 さて、商品価格を据え置きで分量を減らしたりする行為は、正当な価格表明と言えるでしょうか。当然、事業者は「分量調整による価格据え置きだ」と言うかもしれません。本当は値上げをしたいが、消費者の需要を落としたくないのでしょう。冒頭に紹介した「足切り八助」は蛸の実物を見せながら売っているものの、足が6本又は7本の蛸とは表明していません。足を1本又は2本ずつ切って蛸1匹の値段で売る行為(現代流に言えば、不当表示)は、不当な儲けと言われても仕方がないでしょう。