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作成日:2020/03/19
心の通信R2年3月12日《念彼観音力 その一》

 【この時、無尽意菩薩が立ち上がり、身体にまとっている衣の右の肩にかかっている方をはずし、左肩だけにして、右の肩と右の臂を顕わにして、両手を合わせて、佛に向かい、こう語りかけた。

 「観世音菩薩という方はどうして観世音という名になっているのですか。」と言うと、お釈迦さまがお答えになった。

 「そうだね。それは数えきれないほど沢山いる生きものが苦しい目にいろいろ会っているときに、観世音菩薩という方がいるということを聞いて、一心になってその名を唱えれば、その声を聞くとすぐにそれを救いに来るので、世間の音を観ずる、別の言葉で言うと、知る、察するという意味で、そういう名がついているのだよ。

 この観世音菩薩の名を唱えれば、大火事のまんなかに飛び込んでも決して焼けることはない。これは、この菩薩の自由自在な力のおかげなのだ。・・・・・」】

 これは『妙法蓮華経観世音菩薩普門品』という広くお唱えされている観音経のはじまりの一節ですが、このようにして、観世音菩薩はこの世の人々の苦悩の音声を観察して、かれらの苦悩の限りなき救済を誓願されている菩薩さまです。

 この経文は、さらに、この後、さまざまな困難や苦悩に対処してお救いくださる(抜苦与楽)の観世音菩薩の大慈大悲のおはたらきが説かれます。「なむかんぜおんぼさつ」と一心不乱に観世音菩薩の名を唱えれば、観世音菩薩はあなたにとって最も相応しい人々の姿となって、必ずや、たすけにきてくださると、お釈迦さまは、苦悩に喘ぐ私どもに対し、お説きになられます。

 こうしたことから、観世音菩薩の信仰は古くから世界中の人々に広まりました。我が国では今日でも観音信仰の霊場巡りは熱心に行われています。

 実は、昨年の暮れにかけて、この寺で観世音菩薩の不思議なご法縁が立て続け続けにございまして、ことに、密教僧が観世音菩薩の修法のおりの道場観に描かれているままのめったにない如法なる聖観世音菩薩像が偶然に勧請されたのです。これにはさすがに、大変驚きました。何しろ、密教の僧でないとわからなかった希有な聖観音菩薩木像坐像だったのです。・・・(さてさて、このように観世音菩薩さまが繰り返しお出ましになられることは、何事かあらざらんか。)と、いささか、怪訝に思い、心にかかることでございました。

 それだけに、この年末年始以来、小生にとりましては、これまで見えざる世界から導かれて参りました紅玻璃色阿弥陀秘法や聖観世音菩薩護摩祈祷法の日々の修行においては、ただならぬ緊張感がございました。

 ところで、この冬は境内や参道の雪掃きが一度ぐらいしかない異常な暖かさでありました。とはいえ、朝明けの冷え込みはやはり身にこたえ、勤行もいささかゆっくりめでございました。朝は香華茶湯をお供えするのですが、グズグズしているうちにどんどん時間が過ぎてしまいます。ようやくご本尊のみ前で黙想する段になりますと、すっかり、自然も人々も動きだしております。その小鳥や野良猫や人々や自動車の音声の響きを感じながら、本尊や聖観音に安寧の祈念を凝らします。

 暖冬だったとはいえ、三月に入り、ようやく境内の梅が花開き始め、境内の草木は遅めの芽吹きのようです。

 しかし、今年に入って以来、そんな悠長なことを言っていられるときではございませんでした。更に、ここのところの境内の静けさはかなり異様です。子供達の声すら響いておりません。まるで、あの大震災のときのようです。

 日増しに緊張が高まる中で、本尊に向かっておりますと、これは、やはり、由々しき事態を迎えてしまったのかと、おのれの無力さを感じると共に、きがきではなく、ただひたすら、観世音菩薩に対し、非常事態に陥らず、一刻も早い事態の収束を祈念するばかりです。確かに、見えざる世界では、すでに、このことは予見しておられたのでしょうか。

 この寺にお出ましの観世音菩薩は、この事態にそなえるよう警告を発しておられたのかも知れません。それほど、今回も、私どもにとりましては、厳しい状況なのでしょう。

 それにしましても、地球規模での異常気象や自然災害の厳しさ、また、今回のような新型コロナウイルス感染の猛威は、これからを生き抜いていく私たち人類にとりまして、大きな課題です。人類全体が考え違いをしていて、そのことがもたらす事の深刻さに、全地球あげて気づけといわんばかりの一石なのでしょうか。

 確かに、民族や国家やイデオロギーなどで対立しているときではなく、世界の領域に構いなしに拡散する新型コロナウイルスやコンピューターウイルスの問題は、一歩間違えば、とんでもない事態に陥る危険なものです。それだけに、われわれは、子孫のためにも、この課題に真剣に対処せねばならないことも確かです。まさか、正体不明のウイルスの問題がこれほどまで急速に拡大し、地球全体を席巻してしまうとは・・・。この負の連鎖によって、いつ、どこで、どのようにおかしくなっても不思議ではないこと自体が、まさに脅威そのものです。産業・経済・文化の基盤を揺るがしかねず、人類の存亡の危機に貧してしまわぬよう祈りばかりです。

 とにかく、こういった非常事態であればあるほど、私どもは、全人類の持てるだけの叡智を駆使して、問題を解決すべく、事に当たらねばなりません。この不測の事態に直面し、寝る間も惜しんで、働いておられる方々。日々、拡散していく脅威の収束にむけて、必死に取り組み行動しておられる方々には、本当に頭が下がります。まさに、こうした問題に自らのことをかえりみず取り組んでおられる方々、この方々こそが、かのお釈迦さまがお話しされていた観世音菩薩なのではないかと思います。

 どうか、この非常時に奮戦苦闘しておられる生身の観世音菩薩をおまもりくださるよう、そして、不安に苛まれ、混乱し、迷うばかりの私どもを正しくお導き下さるよう、世界中の人々が、心を合わせて、この問題の一刻も早い解決と事態の収束がはかられますようにと願わざるを得ません。

 この寺に観世音菩薩が顕現せられたという不可思議を思いますに、きっと、観世音菩薩は、いまここで、世界を救うために必至に大慈大悲のお力を発揮されておられるのでしょう。皆さん。見えざる世界から、全てのいのちのお側にあって、大慈大悲の慈しみの光を投げかけておられる観世音菩薩とともに、この困難をのりこえてまいりましょう。お大切に・・・・。

 

南無観世音菩薩 南無観世音菩薩 南無観世音菩薩

                                        合掌

                                     萬歳楽山人 龍雲好久