書店に行くと日々発行される書籍数の多さに驚きます。毎年、約7〜8万冊の本が発行され続けています。90年前には1万冊前後が発行されていたようです(岩波文庫・寺田寅彦随筆集第3巻所収「読書の今昔」等による)。ところで、経営者との対話でよく経験しますが、日頃からたくさんの読書をする人とあまりしない人がいます。何か課題がある時に解決のヒントになるような専門の本や資料を持ち出す人や、会議等において古典から有用な言葉を引用して説明する人もいます。活用法は人により区々ですが、新刊書中心の人もいれば古典中心の人もいます。35年程前に知り合った某経営者は、個性的で不思議な経営者でした。農産物の卸会社を経営しており、最初は本に関する話題は出ませんでした。しかしある日、「そんな時の解決策は孫子の兵法で十分さ」と軽く言い放ったのです。筆者も関心のある古典だったので、その内容や具体的対処法を詳しく聞きました。実に的確かつ実践向きの説明でした。その後、その経営者から孫子兵法書以外の本の話は全く聞きませんでした。一般に、経営者は一定量の読書が有効だと思います。新刊書、古典等どちらでも(両方でも)良いのです。要は、何か経営者の信念を形成するような、又は難関を乗越えるような愛読書を読みこなしている事ではないでしょうか。