大工・左官・石工・造園等職人と言われる物づくり熟練者は、従来親方や師匠に付いて修業したものです。職人に限らず、農業・工業・商業・芸術等の熟練者のほとんどが、先達の手解きで技術や経験を修得しました。ところが、現代における職人技能の修得法には大きな変化が起きています。先ず、入職の時期と動機が変化しました。その時期が以前より遅くなり(学歴が高くなったから)、成人後に入職する人が多くなりました。また、従来の入職動機である「家業の承継、手に職をつける為に奉公する」は減り、「建築会社や飲食店に就職して給料をとる」等に変化しました。他方、雇う側の対応も大きく変わりました。従来は給料や労働時間をあまり気にせず、技能や人間形成の発展に責任を感じていました。現在は、正当な給料と待遇を実行すれば、技能教育や人間形成支援は義務ではありません。従来の職人は、修業して技能と人間性が一人前になれば家業を継いだり、自ら開業したりする人が多くありました。現在も同様のコースを歩む人はいますが、待遇が良ければ定年まで勤め続ける人が相当割合います。以上のような職人の労働環境変化は、従来の働き方や進路に固執する層には残念でしょう。しかし、辛い修業をして職人になる過程には多くの弊害もあった事を考えれば、社会経済の変化発展と言えるのかもしれません。