「出たとこ勝負」という言葉があります。大抵は負けるが、時に運良く勝つ事もあります。遊びやゲームであれば大きな支障はないが、事業や公務等であれば許されません。戦争や事業等の勝ち負けの分かれ目は、前もって勝つ計画や準備をどれだけ確実にするか否かによります。2 千年以上前に書かれた『孫子』兵法等にもあります。例えば、「廟算( びょうさん) 」と言い、戦争の前に廟堂( 朝廷) にて計算用の竹の棒を運用し作戦計画の勝算( 勝てる見込み) を評価して作戦を立てたといいます。勝算の算が多ければ勝ち、算が少なければ負けるという( 浅野裕一『孫子』講談社学術文庫参照) 。
今から2 5 年前、X 社( 不動産業) の社長が突然カラオケチェーンに経営参加する事を表明し、筆者と常務が市場調査と計画後に決める事を提案しました。社長はブームに乗り遅れる事を危惧したが、常務が直ちに市場調査を実施して社長に提示したところ、ブームは後5 〜1 0 年で去る事を理解しました。勝算は少ないという結論は正しかったのです。経営戦略にスピード感は必要な要素です。しかし、調査や計画策定をせず思い付きで着手、勝負を時の運任せにしてはなりません。経営行動の決断が迅速である有利性と調査・経営計画策定の必要性のバランスを認識して行動しなければなりません。