作成日:2011/06/20
気まぐれコラム《》気まぐれコラム《人事を尽くす経営》
人事を尽くす経営
物の本によると、禅語に撃驢桔(ケロケツ)というたとえがあるそうだ。杭につながれたロバが、これから逃れようと杭の周りを暴れているうちに杭に綱が絡み付いて、全く身動き出来なくなるというものである。経営者の悩みに資金繰りのひっ迫がある。このままの状態では、仕入代金の決済が出来ない、従業員給料が払えない、借入金の返済が出来ない等、深刻な事態である。まず銀行や親類・知人宅等を飛び回る。結局それらが不首尾になると、高利の融資で一時しのぎをする経営者もいる。
医療機器を開発製造する知人のA社長は、昭和40年代に創業して幾多の試練を乗り越えて来た。資金繰りが行き詰まりそうになったことも珍しくない。しかし、これまで通常の金融機関以外から融資を受けることなく、常に乗り切ってきた。
A社長は、経営情勢が厳しくなると経営計画から経営戦略や社内体制まで見直し、財務諸表や資金繰り表を整備して自ら銀行交渉をしたのである。社長が自信と責任を
持って明確に説明するので説得力があった。
中小企業の資金繰りに関して言えば、調達を急ぐ余り、A社長のような堅実な努力によって健全な融資を求める経営者が少ないのかもしれない。自ら資金繰り状況が説明出来るくらいの準備は当然である。