作成日:2011/06/20
気まぐれコラム《禍を転じて》
禍を転じて
世の中、派遣社員の契約打ち切り等、雇用不安が問題になっています。バブル経済崩壊の時は正社員のリストラが深刻でしたが、不況はいつの時代も大勢の人々に禍をもたらすものです。
Aさんは15年前の不況で勤務先からリストラされました。まだ20歳代で未婚だったので、あまり慌てませんでしたが、突然解雇されたショックは大きかったといいます。他の会社に就職する意欲が湧かず、やがて何か自分で商売が始められないかと思うようになりました。
ある時、井原西鶴の『日本永代蔵』を読む機会があり、面白い職探しをして成功した話を知りました(巻三の一所収)。ある人が儲かるおもしろく珍しい仕事を探していると、仕事帰りの大工の小僧が鉋屑や木端を落としていく姿を見かけました。この人は、拾った木屑で箸を削り、やがて金持ちになって大きな材木商になったという物語。
Aさんは、各地の駅前商店街・繁華街や大型店等を回り、自分に出来そうな商売を探しました。結果、直ちには開業は出来なかったのですが、マッサージ・鍼灸の学校に入学して国家資格を取得し、現在は数人の従業員を雇用してマッサージ関連の仕事をしています。
あの時の禍(失業)が無ければ今日のようなやりがいのある仕事に就けなかったと、Aさんはむしろ感謝しているくらいです。