作成日:2011/06/20
気まぐれコラム《跡継ぎの苦悩》
後継ぎの苦悩
日本や中国の古典を見ていると、人の三大親不孝として後継ぎがいないことがよく出てきます。子が先祖代々の家(特に家業)を素直に引継ぐことが当然とされておりました。同時に、次の後継ぎを残すことも義務とされておりました。
中小企業の多くに後継者がいないと言われますが、その意義は多様です。経営者に子が全くいない場合だけでなく、たとえいても他の仕事に就いていたり、一緒に仕事をしていても将来は転職を考えていたりする場合もあります。また、後継者がいても、自分の代で廃業する割合も少なくありません。
Aさんは、息子夫婦と一緒に駅前商店街で老舗酒店を経営していました。10年以上前から駅前商店街の衰退による商売不振のため、いつ廃業するか悩んでいました。家族の収入合計は月20万円以下でした。Aさんは何度も廃業を択ぶ決意をしました。敷地が広いので、土地活用をすれば今よりも余裕のある生活が出来る自信がありました。しかし、明治時代から先祖が苦労して築いてきた商売を止める疚しさが強かったのです。お盆の墓参毎に廃業の決意を報告しようと思いながら、実行を最近まで引延ばしてきました。
今、Aさんは駐車場を経営し、息子夫婦は近くのテナントで居酒屋を経営しています。酒屋は廃業しましたが、先祖が住んでいた土地を維持していることで満足しています。