作成日:2011/06/20
気まぐれコラム《抜擢人事の失敗》
抜擢人事の失敗
経営者の重要な職務に、人事権の行使があります。会社の規模が大きくなり、上司と部下の序列がはっきりしてくると、一般に社員も出世の階段を意識するようになります。この人事異動には、時には関係者が全く予想しない意外な人物が登用されることもあります。X社(機械部品製造業、社員70人)のA社長の口癖は、「我が社には有能な人材がいない」です。4月の人事異動で昇進や配置換えを発表しますが、いつも「今年も陣容が換わり映えしない」と、不満を漏らしました。A社長は、有能な人物を発掘して全社員が驚くような抜擢をしてみたいと考えていました。こんな中、A社長の目にとまった人物が、入社5年目のB氏(28歳)であり、ある年の人事で経営企画課長に指名しました。経理やパソコンに通じ、銀行取引にも慣れていました。ところが、B氏の積極的な性格が、これまでの上司や同僚からは横暴な振舞いと見られていました。また、課長に昇進するのは早くて入社7年以上35歳以上だったので、相当数の先輩を追い越していました。
結局、B氏は1年後に退職してしまいました。確かにB氏は有能な社員だったのですが、A社長の抜擢人事が裏目に出てしまったのです。人事は思いつきではなく、経営組織の均衡を乱さないことを配慮して、社員の意思を統一しながら進めることが肝心です。