『論語』に、「君子に三畏あり」とあります。三畏とは、天命、大人(有徳の先輩)、人の言葉のことです(金谷治訳注『論語』、岩波文庫参照)。君子のような立派な人物であっても、畏敬する物が必ずあるものです。ところで、商人(ここでは、店員等も含めて)が大事にして畏れなければならない物を三つ挙げるとしたら、一体何でしょうか。
第一は、何といっても顧客です。顧客を畏れるとは、来店された顧客の心情を汲み取って、商品やサービスを提供する接遇を丁寧に行うことです。「有難いお客様のご来店を心から歓迎、感謝致します」という態度と言葉で仕事をすることです。第二は、商品やサービスである。店員等が自店の商品を丁寧に取り扱わないとしたら、顧客が喜んで買うはずがありません。店員が商品やサービス技術等を大事に扱っている姿は、必ず顧客の共感を呼ぶものです。第三は、一緒に働く人です。店員等であれば、上司や同僚の支援を素直に受け入れて感謝の念を持つことです。例えば、飲食店の調理人等が、リーダーの指示を素直に聞いて作業しているとします。このような人は、技術の修得も早く確実でしょう。
要は、どこに大きな価値を置いて仕事をするかによって、業績の良否、人材の成長性、仕事のやりがい等が決まるのです。