ある飲食店の店主から、こんな面白い話を聞いたことがあります。初めて消費税が導入された時、1円玉と5円玉のおつりの準備と受渡に戸惑ったことがありました。そこでおつりを渡す時、10円未満は切り上げて渡すことにしました。お客は喜び、レジでの対話の材料にもなりました。おつりは計算通り渡すという常識にとらわれないアイデアです。
小売店の接客マニュアル等も大体礼儀作法の常識に従って規定されていますが、とらわれ過ぎて弊害が生まれることがあります。「いらっしゃいませ」等の接客用語を正確に発声する、お客様といつも笑顔で接する、商品の説明を懇切に行う等ありますが、これらにとらわれ過ぎて失敗する店員が珍しくありません。例えば、何気なく入った店で商品を眺めていたところ、勢いよく店員から挨拶をされて他のコーナーに逃げたり、店から出てしまったりしたことがないでしょうか。また、AかBか商品選択に迷っている時、突然現れた店員から「今はAが断然人気です。つまり、・・・」とマニュアル通り懇切に説明されて面喰ってしまうこともあります。各分野の常識や規定は重要で、一般に有益ですが、とらわれ過ぎれば害があります。反対に常識を覆して商売のアイデアを工夫したり、極端な場合は新しいサービスや商品開発をしたりすることもあり得ます。